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かっぱのめだま [絵本]

夏休みだなんてそんな事いってる場合じゃないのですが、今回は夏休みに読みたい一冊を紹介します。




かっぱのめだま (理論社のカラー版愛蔵本)








ある淵に河童が住み着きました。それからというものその淵には気味悪がって誰も近づかなくなりました。という訳で人間と仲良くなりたいのに河童はいつも寂しい思いをしていましたが、自分が姿を見せたらみんな怖がると思い、水の中でただただじっとしていました。
そんなある日、通りすがりの商人に声をかけられます。怪しいと思いつつも取り合えずその商人と話をしてみる事にします。すると商人は、「甲羅を何日も日に当てると甲羅が溶けて人間になれる」といいます。
翌日、河童は教わった通りにしてみる事にします。岩の上に登った河童はキレイな景色を見たり、遠くから聞こえるお祭りの音にすっかり感動してしまいます。「人間になれればあのお祭りを見に行ける・・・」と期待して甲羅干しをはじめます。
しかし、あの商人の本当の目的は、高く売れるという河童の甲羅を手に入れる事だったのです。なぜこの手を使ったのかといいますと、河童は妖怪だし下手に殺せば祟りがある、と考えたからです。
しかし、甲羅よりも先に溶けたのは柔らかい皮でした。そして岩にへばりついてしまい、頭の皿の水は沸騰してしまいます。河童は薄れゆく意識の中、通りがかりの子供たちの声を聞きます。
やがて河童は体が干からびて、頭も夏ミカンほどの大きさになって風で落ちてしまい、そこには甲羅だけが残っていました。
すると、あの商人がやってきて「もういいだろう!」とばかりに、大喜びで甲羅を抱えます。すると、「おらの甲羅なくなったかね?」という不気味な声がします。足元には河童の目玉が2つ残っていてこちらをじっと見ているのです。商人は悲鳴を上げてそのまま淵に落ちてしまいます。


どちらかというと悲しい話なんですが、絵本でありながらもホラーの要素も入っています。でも面白いです(笑)。あと、たとえそれが、妖怪や怪物であったとしても相手を騙してはいけないよ、という戒めも入っているんですね。という感じで寓話的な部分もあるんですね(笑)。
勿論、こういった事は現実にもあるんですよ。例えば、詐欺などで騙されたと気づいた時はすでに遅かった・・・、とか。

もう一度いいます。河童は人間の友達がほしかったんです。せめて同族の仲間がいればのよかったのに・・・。でもかといって「泣いた赤鬼」みたく、大切な仲間を犠牲にして何かを得るのは考え物です。
または「キリクと魔女」みたく優しくて勇気のある人が話かけてくれれば・・・、とも考えました。

この物語をネットでたまたま知り、まったく救いがないのかと思いきや、いざ読んでみればそうでもなかったのです。
やがて甲羅干しをした岩のそばに社が建てられ、お祭りが開かれるようになります。評判の賑やかさです。
そして、岩にくっついた目玉は誰かが通る度に、ただただニヤニヤ笑っていました。
なので、河童が見たかったお祭りが開かれるようになったのがせめてもの救い、あと商人は自業自得だっから結末としては悪くないほうだし、もし商人がこれで大儲けしていたらそれこそ救いのない話になっていたんじゃないか、と思うんですよ。そして最後のページには、子供たちをうれしそうに見ている河童の目や(子供たちも河童に親しげにしている様子)、河童祭りの絵もあります。

あと、キリクと魔女のお話は別の機会にいたします。
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コメント 4

don

こんにちは~
興味深い話ですね。
しかし、孤独で困ってる人を騙したらダメですよね。
残酷すぎます。
by don (2020-07-04 17:46) 

のべる・K

>donさん

そうなんですよ~。
たとえ相手がどんな人であっても騙してはいけません。
by のべる・K (2020-07-05 12:12) 

ステイク・ミディアム

こんばんは。またご無沙汰してしまい、申し訳ありません。

個人的、妖怪とか魔物とかの類が登場する逸話は好きなので、例外なく小生も色々見聞きしているのですが、何とも切なく、かつ見方を変えれば恐ろしい物語ですね。
小生の知るところでは海の向こうの作品ですが「アルマジロズソング」という悲劇的な童話があって、方向性自体は全く異なるものの、主人公が夢のために命を落とす部分、そして結果的には「実を結ぶ」部分で通ずるものを感じました。

しかしして小生が思うのは今の世の中、その河童やアルマジロのように「正直者が馬鹿を見る」のがいつまで経っても改善されないことですね。
悪い奴ばかりが高枕でデカい鼾をかきながら眠りを満喫する一方で、真面目にまっすぐ生きている者は報われることなく無念のままに死んでゆく…こういうことがあっては本来いけないんですよ。
せめて我々も、自分たちでできる小さな部分から、そういった間違いだらけの現実に改善の策を設けて、よい世の中へと変えていきたいものです。

by ステイク・ミディアム (2020-07-05 23:08) 

のべる・K

>ステイク・ミディアムさん

いつも遅くなってすみません!
私も妖怪や幽霊などにオカルトチックな話に興味があって時々読んだりしています。今回の一冊もそれです。
「アルマジロズソング」はじめて聞きました!さっそく調べてみると・・・。これも悲しい話みたいですね。確かに、この物語と少し共通する部分があるみたいですね。

そうです、悪者がのうのうと生きている社会になってはいけません。悪者には何らかの制裁を与えるべきです。
それなのに、いい人が報われなかったり、優しい人が痛い目にあったりするんですよね。そして、悪い人が我が物顔で生きている・・・。
そう考えると憤りを感じますね。
by のべる・K (2020-07-09 19:17) 

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