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指揮のおけいこ [実話、エッセイ]

読書の秋、芸術の秋という事で、今回は音楽の世界が勉強できるエッセイを紹介します。
エッセイというのは、何ていうのかな・・・、自分が経験した事や思った事を面白おかしく書いた文学ですかね・・・。

指揮のおけいこ (文春文庫)



ある指揮者が自分の経験した事を通して、指揮者の仕事について語って行きます。
昔、指揮者に憧れた事があるので、どんな指揮者の世界ってどんなだろうと思い、買った本です。本書を買ったのは10年以上も前の事ですが、完全に読んだのはつい最近です。

指揮者は何のためにいるのか、というのもちゃんと書いてあります。でも、私はそんな事よりも、指揮している時はどんな気分なのか知りたいです。あ、そのために買ったんだっけ。

真面目な話なのですが、ユーモアいっぱいの文章なので何度も読んでしまいます。私が思わず読み返してしまうのが「無表情で指揮してみたら」というところです。著者は昔、全くの無表情で指揮をしたらどうなるかというのをテレビ番組で実験したそうです。以下本書からの引用です。

曲は月並みだが、ベートーヴェンの交響曲第五番『運命』にした。
(中略)ビデオ撮りの前の日にぼくのデスマスク、いや、ライフマスクを作ることにした。自分の無表情のマスクをかぶって、それをテレビに写せば無表情の大暴れが実現するわけだ。
テレビ局の控室の大きな机に、仰向けになった。顔全体に枠をはめ、ドロドロの石膏で顔を埋めて型を取るのである。死なないように、呼吸用の二本の管を、鼻の中に突っ込まれた。デスマスクだとこれがいらない訳だ。
(中略)こうやってとった型で面を作り、これをかぶって「ジャジャジャジャーン」である。
ライフマスクはメイクアップされ、何とも薄気味悪いものだった。後で見た画面では、完全に無表情なぼくが暴れ狂っていて実に不気味だった。

無表情で指揮した結果、まったく音楽にならなかったそうです。だたオーケストラの人たちが気持ち悪かっただけで。そして・・・。また引用です。
何年か前押入れの奥をゴソゴソやっていたら、いきなり「ライフマスク」が出てきて、気持ち悪かった。捨てるのもなんだし、困っている。
だそうで。

指揮台の手すりについても書いてあります。それは指揮者が台から落ちるのを防ぐためです。でも、中に手すりがないところもあるそうです。

196Pには、楽器は凶器(人を殺すための武器)になるのか、という事が書いてあります。実は私も似たような事を考えた事があります。例えば、ちょっと危ない話ですが、指揮棒に毒を塗ってそれを人に突き刺せば凶器に・・・、って感じで。ちなみに昔、指揮者の棒が手から飛んで、バイオリン奏者の目に突き刺さる事故があったそうです。勿論、片目を失明したとか。
本書にも書いてありますが、バイオリンで殴られても死にそうにはないですよね。あと、チェロはあまりにも重くてとっさの武器には無理だとか。可能だとすればのど自慢に使う鐘だそうで。叩く棒はハンマーなので凶器になりそうだとか。
個人的な考えですが、チェロにしてもバイオリンにしても、ちょっと改造すれば銃などの凶器にでもなるんじゃないかなと思うのです。ただ、それなりの知識は必要ですが(笑)。

クラシック好きさんにはたまらない一冊です。あと、将来指揮者になりたい方も読んでみてはいかがでしょうか。
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